事業再構築補助金の審査は、作成する事業計画を基に行われます。「補助金の審査は、事業計画を基に行われます。採択されるためには、合理的で説得力のある事業計画を策定することが必要です。」と明示されています。事業再構築補助金は提出した申請書(事業計画)を審査員が評価し、採点しより優れた事業計画を採択されます。採点については後日公募要領にて掲載される「審査項目」を漏れなく、かつ説得力高く記述をしないといけません。
その上で、事業計画書作成に含めるべきポイントをまとめてみました。
事業計画を策定する上で、自己の事業資源を分析して他社と比べて強みとなる部分、あるいは弱みとなる部分を抽出・評価し、外的要因たる機会(Opportunities)、脅威(Threats)については、経済状況、政治情勢・法律の改変、技術革新等によって生じる機会や脅威を把握・評価していきます。そのためのツールとして、SWOT分析というフレームワークがよく使われます。
会社はどんな強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)を持っていて、どんな機会(Opportunities)、脅威(Threats)に囲まれているのか、分析する方法です。「強み(S)」は、他の会社には無く、自分の会社だけが持っているもの、「弱み(W)」は逆に、自分の会社に足りないものです。これらは会社内部の話になります。
「機会(O)」は、お客様を獲得して売上を伸ばすことができる状況、「脅威(T)」は、お客様を獲得して売上を伸ばすのが難しい状況のことです。これらは会社外部の話になります。
事実から強み(S)と弱み(W)、機会(O)と脅威(T)を取り出し、これらを組み合わせて事業の方向性を示します。強みを活かして機会を得る(S→O)または脅威を乗り切る(S→T)、弱みを克服して機会を得る(W→O)または脅威を乗り切る(W→T)、という組み合わせです。
SWOT項目を出すにあたっては、以下のようなマトリックス図を活用します。
自己分析は甘すぎても、厳しすぎてもよくありません。自社の問題点をきちんと理解したうえで解決の手段や道筋を考察し、具体的な改善策や是正策を提示していきましょう。
一般的になワードすぎてどのような項目が審査ポイントになるのかわかりにくいですが、「具体的は、どのような環境条件下で誰と戦うのか」ということかと思います。事業環境を分析するには、3C分析がよく使われます。
本来は、事業環境分析→SWOT分析と手順をふむことで、自社の「強み」、「弱み」、「機会」、「脅威」を具体的行動として洗い出すことができ、未来を見据えた戦略目標を設定することができます。
3Cとは、「Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)」の3つの頭文字を取ったもので、マーケティング環境を抜け漏れなく把握できます。3C分析を活用することで、顧客や競合との関係性が理解でき、自社の強みを生かした戦略を考えることが可能になります。
3つの側面で分析すべき例は以下のようになります。
顧客 → 業界市場規模、市場・顧客のニーズ競合 → 競合の現状シェア、競合の強みや弱み自社 → 自社の現状シェア、自社の強みや弱み、自社のリソース
まず市場(顧客)の大きさやニーズを把握し、次に、競合が市場においてどのような位置にいて、どのように対応しているのかを分析します。最後にその分析を元にして、自社の現状を把握することで、これから行っていく戦略や成功要因を導いていくのです。
「事業再構築の必要性」を踏まえ、具体的にどういう事業再構築(業態転換や新分野展開)を行うかが求められています。「提供する製品・サービス」を実現するために必要な設備や工事にはどういうものがあるのか、そのために「導入する設備、工事等」が、事業再構築に必要なのかという具体的で、整理された文章が求められると思います。
まずは大きな視点で市場環境がどうなっているかを4つの視点で検証してみましょう。 ①「政治的視点」法律変更の影響はある市場か?(規制緩和がある市場は大きくなる) ②「経済的視点」金利や為替などの景気はどう影響するか?(コストへの影響なども大切な視点) ③「社会的視点」社会情勢で大衆心理や流行はどんな影響があるか?(一過性のブームか構造的かの見極めが大事) ④「技術的視点」新技術や技術の陳腐化がどう影響を与えるか?(ベンチャー企業の動きにも注意)。
結論として、何が一番大きな要因で市場が魅力的になるかを書きましょう。単に市場環境の考察を羅列しただけでは、その市場がどうなのかが分かりません。結論を一行程度で説明できるようにすることが大切です。(例)「政府の補正予算と防災への意識の高まりにより、防災市場は大きくなることが予測される」など。
ここでは、事業を展開する市場がどの程度魅力的なのかを具体的に説明していきます。具体的とは、数字で表現できるものは全て数字で表現するという意味です。
市場規模や成長率などのデータを保有していない場合は、ネット検索で政府機関の~白書という名の刊行物や民間のシンクタンクのデータを調べてみましょう。また業界団体がある場合は、データが公開されている場合もあります。
なお、冒頭にも書きましたが、事業計画には最も象徴的なデータだけを選別して記述してください。よくデータの羅列がある事業計画書を見ますが、読み手側が分かりにくくなります。
また、注意点としてデータを細かすぎるくらいに精緻なものを求める方もいますが、まずは大雑把に10億円の市場なのか1000億円の市場なのか、もしくは成長率が10%なのかマイナスなのかなど全体感を一目で分かるように表現しましょう。
自社の優位性を確かめるために先程3C分析におおけるの自社(Company)をさらに掘り下げます。そのためのツールとして、VRIO分析が使われます。VRIO分析のフレームワークは、経済価値(Value)、希少性(Rarity)、模倣困難性(Imitability)、組織(Organization)の4つに区分され、自社の経営資源(人・モノ・資金・情報・組織)について、市場での競争優位性を把握する為に用います。
まずはフレームワークである4つの要因についてみていきましょう。
企業の有する経営資源が「経済的な価値がある」とみなされているかを分析する要素です。外部環境からの脅威や、市場への進出機会を考える際に重要なポイントとなります。組織や顧客、社会全体に対して多くの利益をもたらしているかであり、経営資源の獲得や維持にかかっている費用のことではありませんのでご注意ください。
希少性が高ければ高いほど顧客やユーザーの購買意欲を刺激することができるため、価格以外の部分で勝負することが可能となります。市場において珍しく、希少価値の高いものであるかなどを評価する項目です。希少性が濃ければ、他企業により後発の市場参入を防ぐことができます。
他社が模倣できない経営資源を分析する要素です。模倣が難しい希少資源を有することができれば、競争優位性を長期間維持することが可能となります。高ければ高いほど持続性が高まり、市場において長期にわたって唯一無二の存在となることができるため、リピーター率の増加や新規顧客の獲得、市場シェアの拡大など多くの恩恵を受けることが可能となる要素です。また、顧客数が増加することによって、現行モデルの使用感や改善ニーズ、新商品に求める機能やデザインなど、お客様の声が集まりやすくなり、マーケティングの面でも他社よりも有利な立場を得ることができます。
企業の有する経営資源を有効に活用出来る組織かどうかを分析する要素です。経営資源が生み出す価値や希少性、模倣可能性を全従業員が正しく理解し、競争優位性の維持向上を意識的に図る組織体制を構築することができているかを評価していきます。価値や希少性、模倣可能性を兼ね備えた経営資源に組織という評価が加わることで、経営資源の持つ競争優位性を一時的なものから持続的なものへと変化させることが可能となります。
基本的には、「経済価値→希少性→模倣困難性→組織」の順に分析を行います。要素ごとの分析結果による状態は、以下の表の通りです。
それぞれをYes、Noで回答することにより、「競争劣位、競争均衡、一時的な競争優位、持続的な競争優位」のどれかの状態に位置付けることができます。自社を分析し、最も競争力が優位な状態に保つためには、4つの要素が全て揃う必要があります。
VRIO分析を行う際の順番は①分析対象となる経営資源の特定→②経済価値の分析→③希少性の分析→④模倣困難性の分析→⑤組織の分析です。それぞれの段階で「それが自社に備わっているか。備わっていなかったら何を加えればよいか」という視点で分析してみましょう。
VRIO分析は個々の要素に分けることにより、全体像が理解しやすくなります。それぞれの要素ごとに自問自答し、自社が競合優位にあるかどうかを知ることができます。
また、VRIO分析を理解するためには、その上位概念である3C分析の不可欠です。VRIO分析は、あくまで3C分析の「自社分析」に過ぎません。その他の分析方法にも目を通しておくようにしましょう。
社内において誰が何をするか(組織としての役割や責任・権限)の明示が求められます。さらに事業によって社内だけではなく、社外の取引先や協力会社との連携もある場合は、記載が必要です。
1年間程度の事業再構築補助金の事業実施期間において、のタイムスケジュールをまとめる必要があります。具体的にいつ、誰が、何をするかをまとめる必要があります。
今回の事業再構築における投資や工事にどの程度の費用が必要になるか、そしてその費用をどうやって調達するか(主には自己資金なのか融資なのか、どちらか)を明らかにする必要があります。それをふまえて、事業の実施から、補助金がおりるまでの具体的な資金繰り表の作成があればより具体的でしょう。
今回の補助金がされた後、3~5カ年間の事業計画損益表の作成が必要です。売上や利益だけでなく、付加価値額がどう推移し、目標を達成するのか、表にしてまとめる必要があります。
今回の、事業再構築プランが本当に必要なのか?現状の企業実態と比較して実現可能で、妥当なのか?上記のような経済への貢献も、審査の材料になる可能性は十分にあります。
現状では具体的なポイントは不明ですが、地域における公的な事業や、人材採用の拡充といった要素や地域未来牽引企業※に選定されている企業、もしくはそれに準じるような企業は加点をされる可能性があります。https://www.meti.go.jp/policy/sme_chiiki/chiiki_kenin_kigyou/index.html
今回、行おうとしている事業再構築に”革新性”があるかどうかということが評価されるでしょう。ポイントとなる革新性とは「自社にはなく、他社でも一般的ではない取り組み」のことと考えるとわかりやすいです。その他、内閣府のサイトにあるイノベーションの促進でとりあげられているようなテーマに関連する事業なども加点要素になる可能性があります。https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/important/innovation.html